昔日を偲んで
遠つ人 松浦佐用比売 夫恋に
領巾振りしより 負へる山の名
山上憶良の作と伝えられるこの歌は、新羅へ出陣する大伴狭手彦を、松浦佐用姫が山上から領巾を振って見送った伝説を歌ったものです。
恋人の大伴狭手彦を思うあまり姫は死んでしまい、その霊を弔って建てられたのが鏡山の入口にある恵日寺です。
狭手彦は伝説的な英雄で、九州の風土記には狭手彦が主人公の物語が数多く残されています。
当時(6世紀中頃)、朝鮮半島にあった日本府任那が新羅に侵されたため、勢力挽回を目的に出陣するときの、狭手彦は派遣軍の大将です。
作者、山上憶良は筑前国司として、赴任先で昔日を偲んで作ったといいます。
万葉集に見られる防人たちの歌と、その時代背景をもとに九州の道をたどってきましたが、古代といえども道を通して政治が行なわれ、そこに庶民の生活があったことは、歴史が克明に物語っています。
朝廷のあった畿内を中心に政治が行なわれていたのにもかかわらず、1200キロも離れている東国と九州がこの防人という一点で結びつけられていたのは、交通網が未発達な時代だけに不思議なことといわざるをえませんね。
